日本版DBS法成立ー26年度にも施行

子どもと接する仕事をする人の性犯罪歴を確認するいわゆる「日本版DBS」の創設を盛り込んだ児童対象性暴力防止法が6月19日の参院本会議で、全会一致で可決成立しました。

性暴力から子どもを守る目的で、学校や保育所、児童養護施設に対し、犯罪歴の確認や職員研修などを義務付けることになります。犯罪歴は刑の終了から最長20年確認できるようになります。子どもへの性加害を減らす効果が期待されており、今後はその実効性が問われます。

「日本版DBS」はイギリスの「DBS=前歴開示・前歴者就業制限機構」という公的機関の制度を参考にしています。法律では、学校設置者や保育の事業者に対し、研修や子どもたちとの面談などを通して、性被害が起きないよう日頃から対策を進めるとともに、新しく採用する職員や現職の職員に対して、性犯罪の前科の有無の確認を行い、性犯罪歴が有る場合は子どもと接する業務に従事させないなどの防止措置を講じることを義務づけています。

・確認の流れは、学校や保育所などがこども家庭庁を通じて法務省に申請し、犯罪の有無を示した「確認書」を交付する。
・学校や保育所は犯罪歴が確認された場合、就業希望者は採用せず、現職の教員らは子どもと接しない仕事へ配置転換するといった対応を求める。
※本人に事前通知された段階で内定辞退や退職をすれば、確認書は交付されない。
・学習塾やスポーツクラブなどは任意の認定制度とし、認定を受けた事業者に限り、性犯罪歴の確認を義務づけることになっているが、青少年教育団体や任意団体などの取り扱いについてはこれから。
・個人事業主のベビーシッターや家庭教師らは認定制度の対象外。

さらに効果のある制度にするためには、「認定制度の課題」「照会の対象となる性犯罪歴の範囲」「性犯罪歴を紹介できる期間」などの課題があります。

・「認定制度」について

認定を取得するかどうかは任意だが、学習塾やベビーシッターなど事業者は認定を取得していないと利用してもらえなくなる可能性が高いので、多くの事業者が認定の取得を希望すると考えられる。キャンプなどの自然体験活動事業者や青少年団体などのスタッフについては、その取扱いが明確になっていません。ボランティアの扱いも課題です。また、職員の研修や相談窓口の設置など体制を整えるためには、事業者のコストアップにつながります。この辺りは行政などからの支援が必要かもしれません。

「照会の対象となる性犯罪歴の範囲」について

性犯罪歴を照会する対象となっているのは、刑法・条例に違反する行為(こどもに対する性的な行為、痴漢等)で有罪判決を受けた者(前科者)の情報に限定されています。小児性被害事案の中には「不起訴処分(起訴猶予)」や「組織での懲戒処分」にしかなっていない事も多く、小児性犯罪で起訴され、有罪が確定するもの(前科)はごく一部であると言われています。つまり、起訴猶予や示談になった事案等は対象外。犯罪を行ったことが明らかでも、性犯罪歴のデータベースに載っていないことがあります。

「性犯罪歴を紹介できる期間」について

性犯罪歴を照会できる期間は、禁固以上が「刑の執行終了から20年」執行猶予が「裁判の確定日から10年」罰金が「刑の執行から10年」となっています。複数回処分を受けていても同じ小児性犯罪を繰り返す者が一定数いる事から、20年が妥当であるのか議論が必要です。

「現職の確認が間に合うのか?」

現職にも(定期的な)前科チェックを求める。教育や保育の現場で働く人は200万人以上といわれる、これに学習塾や各種の習い事教室などを含めると、数百万人が対象となる。同姓同名や婚姻、転居などで十分に情報が追えない可能性もあるのではないか?個人の犯罪歴を民間事業者が持つことについても、漏洩リスクや守秘義務など課題があるだろう。

「子どもの人権(尊厳)を守ることが重要であることは間違いないが、制度がしっかりと動くためにはまだまだ課題が多いと思われる。

【NHK】「日本版DBS」被害者 加害者 模索する現場の声から考える

【テレ朝】「スタートラインに立てた」日本版DBS法が成立

【読売新聞オンライン】「日本版DBS」法成立、性犯罪歴を最長20年確認可能に…2026年度をめどに施行